RAGとは?基本的な仕組み、顧客サポートにおける導入事例と将来性RAGとは?RAGの定義と概要Retrieval-Augmented Generation (RAG) は、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれている手法で、外部のナレッジベースから関連情報を検索し、その情報を用いて言語モデルが回答を生成するアプローチです。RAGは、大規模言語モデル (LLM) の性能を向上させるための重要な技術の一つとして注目されています。OpenAIのGPTsで使用可能な「知識(Knowledge)」も、このRAG技術を使用した機能のひとつです。ちなみにRAGという言葉の起源は2020年にPatrick Lewis氏が発表した論文『Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks』だと言われています。RAGの仕組みRAGのプロセスは主に2つのステップで構成されます。まず、ユーザーからの入力クエリに基づいて、外部の知識ベースから関連する情報を検索します。次に、検索で得られた情報を言語モデルに入力し、最終的な回答を生成します。検索 (Retrieval)ユーザーの質問に関連する情報を外部知識ベースから取得生成 (Generation)取得した情報とユーザーの質問を組み合わせ、LLM が回答を生成RAGと生成AI、LLMそれぞれの関係RAGと生成AIの関係生成AIは、与えられた情報を基に新しいコンテンツを生成する技術です。RAGは生成AIの一種であり、外部知識を活用することで、より正確で多様な回答の生成を可能にします。例えば、ユーザーが「●●(製品名)の価格を教えて」と質問した場合、RAGを使用していない生成AIチャットボットでは、学習データに基づく一般的な回答しか生成できず、「●●(製品名)」に関する学習が為されていない場合、間違った回答を行ってしまいます(いわゆるハルシネーション)。一方、RAGを使用して外付けの知識データとして「●●(製品名)」の製品情報データなどを接続しておくことで、その情報を基に正確な情報を含む回答を生成できるようになります。このようにRAGを用いることで、特定のタスクに対して生成AIの性能を大幅に向上させることができます。他にも特定タスクに関する性能向上が期待できる手法としてファインチューニングやモデルの再学習などが挙げられますが、品質の高い膨大な学習データや機械学習等に関するAIエンジニアリング知識・スキルが必要であったり、計算リソースなどの学習コストが掛かるため、アプリケーションレベルで簡単かつ即効性のある特定タスク性能向上手法として注目されています。RAGの利点と課題RAGの利点RAGの主な利点は、外部知識を活用することで、特定タスクにおける言語モデルの回答の質が向上することです。また、他の性能向上手法と比較しても低コストで簡単に成果が期待できることも利点のひとつです。LLM の回答の質向上学習外の情報も回答に組み込むことができる。最新の信頼できる事実にアクセス可能LLMはある時点での知識に基づいた回答になるが、RAGにより最新の情報を与えるすることができる。ユーザーが情報ソースを確認可能LLMの場合、何が情報源かを特定することはできないが、RAGでは何を情報ソースとして回答したか明示することができる。継続的な再学習の必要性を削減LLMを独自開発もしくはFine-Tunningする場合、新しい情報を取り入れる場合に再学習が必要になるが、再学習のコストと手間を削減できる。RAGの課題と対策RAGの課題の一つは、検索フェーズにおいて最も関連性の高い情報を取得することです。この課題に対しては、検索アルゴリズムの改善や、知識ベースの質の向上などが有効です。また、生成フェーズにおいては、検索結果を適切に利用しながら、自然な回答を生成することが求められます。RAGの実装方法RAGの実装手順RAGを実装する際の主な手順は以下の通りです。 ※企業が自社内のデータを元にRAGを構築することを想定した例外部知識ベースとして使用するデータを選定: RAGで使用する外部知識ベースを準備します。アウトプットとしてAIに生成させたい内容を明確にした上で、それに関連する社内データを選定します。手元にデータとして存在していない場合には、参考となる情報をもとに例えばExcelでQA形式データや階層構造データとして作成します。知識ベースの質が、RAGの性能に大きな影響を与えるため、信頼性の高いソースを選択・準備することが重要です。検索エンジンの選択・実装: 知識ベースから関連情報を検索するための検索エンジンを用意します。Elasticsearchなどのオープンソース検索エンジンを利用する、もしくは独自の検索アルゴリズムを実装します。検索エンジンの性能もRAGの効果を左右するため、適切なものを選択・実装する必要があります。言語モデルの選択: RAGで使用する言語モデルを選択します。現在はOpenAI社のGPTシリーズをはじめ、多くの大規模モデル(LLM)をAPIとして利用することが可能です。そのため、GPT、Claude、Geminiなど好きなLLMを選択することが最も手軽でしょう。また、必要に応じて言語モデルに対して、RAGタスク用のファインチューニングを行うことも一定レベルで有効です。RAGモジュールの実装: 検索エンジンと言語モデルを連携させるRAGモジュールを実装します。RAGモジュールは、ユーザーの入力を受け取り、検索エンジンを用いて関連情報を取得し、言語モデルに入力(プロンプト内に埋め込む)して回答を生成するプロセスを管理します。システム全体の統合: 実装したRAGモジュールを、ユーザーインターフェース(例えばチャット型など)やその他の必要なコンポーネントと統合します。現在では、RAG構築に役立つ便利なライブラリとして「LangChain」や「LlamaIndex」などが登場しており、これらを活用したアプリケーションも多く存在しています。引用:LangChain(https://www.langchain.com/)引用:LlamaIndex(https://www.llamaindex.ai/)RAGの活用事例企業におけるRAGの活用千葉県にあるマザー牧場では、グランピング施設「THE FARM」の宿泊希望者や利用者に対してRAG型AIチャットボットを公開することで、ユーザーの自己解決を促進することによる効率化へ取り組んでいます。2023年5月からPoCをスタートし、同年8月から一般公開をしているという非常にスピーディな事例です。実際にユーザーの自己解決を促進することにより、導入から半年後には電話によるお問い合わせ数が3分の1まで減少(66%減)し、施設スタッフの対応時間外(夜間や早朝など)でもユーザーの質問に答えられるようになったことが大きな成果に繋がったと語っています。また、RAGで使用するナレッジデータを構築・運用していくことにより、社内ノウハウの統合管理化やスタッフごとの知識レベルの平準化にも繋がったと語っています。電話問い合わせ66%削減!マザー牧場様に、MediaTalkGAI運用6ヶ月後インタビュー実施!|MediaTalkGAI公式note https://note.com/mediatalkgai/n/n17f76f1c9046?subrt=share_sb他にも多くの企業で社内データの活用手法としてRAGが導入・利用されており、社内の業務マニュアルや製品情報、従業員規則など、内部データをナレッジベースとしてLLMと組み合わせて、必要な情報を取り出しやすく、理解しやすくする環境整備が進んでいます。RAGの将来展望RAGは、今後さらなる発展が期待される技術です。特に、以下のような点で重要な進歩が見込まれています。マルチモーダルRAGの開発: 現在のRAGは主にテキストデータを扱っていますが、将来的には画像、音声、動画など、様々なモダリティのデータを統合的に処理できるマルチモーダルRAGの開発が期待されています。これにより、より多様な情報源から知識を収集し、自然な対話を生成できるようになるでしょう。知識ベースの自動更新: RAGの性能向上には、知識ベースの質が重要な役割を果たします。将来的には、機械学習を用いて知識ベースを自動的に更新・拡張する技術の開発が進むと考えられます。これにより、常に最新の情報を取り込んだ知識ベースを維持することができるようになります。各産業への応用拡大: RAGは、現在主に研究段階にありますが、将来的には様々な産業での実用化が期待されています。例えば、カスタマーサポート、教育、医療、金融など、幅広い分野でRAGを活用したシステムの導入が進むと考えられます。これにより、各分野における情報アクセスや意思決定の効率化が実現するでしょう。以上のように、RAGは今後も活発な研究開発が行われ、様々な分野での実用化が進むと期待されています。まとめ本記事では、RAGの基本的な仕組みや、生成AIおよびLLMとの関係などについて解説しました。RAGは、外部知識を活用することで、言語モデルの性能を向上させる重要な技術です。RAGを適切に実装・活用することで、質問応答、情報要約、個人化された提案など、様々なタスクで高い性能を発揮することができます。RAG研究の進歩は、人間とAIのコラボレーションを促進し、知識集約型社会の実現に貢献するでしょう。読者の皆様におかれましては、本記事を通じてRAGへの理解を深めていただき、RAGを活用した新たなアプリケーションやサービスの導入や開発にチャレンジしていただければ幸いです。弊社メディアリンクでは、「AIto(アイト)」というRAGを活用したカスタマーサポートの自動化サービスを提供しています。本記事で紹介したRAGシステムも活用したAIエージェントです。カスタマーサポートの自動化・効率化に興味のある方は、お問い合わせください。以下からオンライン面談もお申し込みいただけます。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。%3C!--%20Begin%20TimeRex%20Widget%20--%3E%0A%3Cdiv%20id%3D%22timerex_calendar%22%20data-url%3D%22https%3A%2F%2Ftimerex.net%2Fs%2Fshin.miyata_b98b%2Fbd3ca95d%22%3E%3C%2Fdiv%3E%0A%0A%3Cscript%20id%3D%22timerex_embed%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fasset.timerex.net%2Fjs%2Fembed.js%22%3E%3C%2Fscript%3E%0A%0A%3Cscript%20type%3D%22text%2Fjavascript%22%3E%0A%20%20TimerexCalendar()%3B%0A%3C%2Fscript%3E%0A%3C!--%20End%20TimeRex%20Widget%20--%3E